住宅ローンは、一般的にはおおよそ30〜35年の長期間にわたり返済されることが多いです。
しかしながら、この期間中に予期しない出来事が自分に起こる可能性もあります。
例えば、転職をして収入が減少することも考えられますし、けがや病気によって働くことが困難になることもあり得ます。
もし、働くことができなくなってしまえば、当然ながら収入が途絶えることになり、住宅ローンの返済も厳しい状況になるでしょう。
そこで、今回はけがや病気によって住宅ローンの返済が困難になった場合の対処方法についてご紹介いたします。
住宅ローン返済中に重大な病気やけがになったら?
住宅ローンを返済していく中で、けがや病気になる可能性はゼロではありません。
もしもけがや病気が原因で働けなくなってしまうなら、収入が途絶えてしまい、住宅ローンの支払いが困難になるかもしれません。
そんな予期せぬ事態に備えて、多くの金融機関は住宅ローンを利用する際に団体信用生命保険への加入を義務付けています。
ただし、健康状態に問題がある場合は、この団体信用生命保険に加入することができません。
その場合は、団体信用生命保険への加入が義務付けられていない「フラット35」を利用することになります。
もしも加入できたとしても、団体信用生命保険でカバーできる範囲には限りがあります。
では、具体的に団体信用生命保険はどのような場合に利用できるのか、説明していきましょう。
高度障害の場合は団体信用生命保険が利用可能
団体信用生命保険は、住宅ローンを組んだ人が亡くなったり、重度の障害を持ったりした場合に、その時点でまだ残っているローンの支払いを代わりにしてくれる保険です。
高度障害状態とは、病気やけがなどによって身体の機能がひどく低下している状態を指します。
団体信用生命保険では、このような状態に該当する基準を設けています。
高度障害の該当基準を紹介
団体信用生命保険が定める高度障害状態とは以下の7つの状態を言います。
両眼の視力を永久に失ったもの
両眼が完全に視力を失った状態を指します。
しかし、完全な失明ではなく、双眼とも矯正視力が0.02以下であり、回復の可能性がない状態です。
言語またはそしゃくの機能を永久に失ったもの
言語機能を失い、しゃべれなくなった状態のことを言います。※詳細の状態基準があります。
脳の言語中枢が損傷を受けているため、失語症が起こっている場合には、その回復の見込みがないと判断されることがあります。
また、声帯が完全に摘出されてしまっている場合には、話すことができない状態になります。
さらに、流動食以外のものを摂取することができず、その回復の見込みもない場合には、一般的な食事ができない状態になります。
なお、ここでの流動食とは、液体やおも湯のような特殊な形態を持った食事を指しており、かゆ食は含まれていません。
中枢神経系、精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
「中枢神経系」とは、神経の統合や支配を担当している重要な部分を指します。
具体的には、脳や脊髄などが含まれます。
この部分に障害があると、日常生活の介助が必要な状態になります。
「胸腹部臓器」とは、肺や心臓、消化器官など、胸や腹部にある臓器のことを指します。
これらの臓器に障害があると、日常生活において介助が必要になることがあります。
ただし、食事の自己摂取が可能であったり、歩行や入浴ができたりなど、一部の行動が自立している場合は、この状態には含まれません。
両上肢とも、手関節以上で失ったか、またはその用を永久に失ったもの
この状況は、片方の腕が手首の上で切断され、片方の脚が足首の上で切断されているため、その部位を完全に動かすことができません。
つまり、片腕は手首より上の部分で、片脚は足首より上の部分となります。
両下肢とも、足関節以上で失ったか、またはその用を永久に失ったもの
両脚とも足首以上のところで切断している、両脚が自分でまったく動かせない状態を言います。
1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を永久に失ったもの
この状態は、片方の腕が手首の上で切断され、片方の脚が足首の上で切断されているため、その部位を完全に動かすことができません。
つまり、片腕は手首より上の部分で、片脚は足首より上の部分となります。
1上肢の用をまったく永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
この状態は、片方の足が足首よりも上で、片方の腕が手首よりも上で切断され、それらの部位をまったく動かすことができない状態を指します。
高度障害状態になっても保険金を受け取れないケース
高度な障害を持ってしまった場合でも、保険会社が保険金を支払わないことがあるかもしれません。
たとえば、住宅ローンを組んでいる人が「保険が有効になる前に高度な障害になった場合」や、「意図的に自ら高度な障害の状態を引き起こした場合」、「戦争や他の混乱によって高度な障害の状態になった場合」、「反社会的な活動を行っている場合」などです。
高度な障害の状態になっても、保険金を受け取ることができないケースもあるので、事前に確認することが大切です。
高度障害と認められない病気やけがの場合は?
団体信用生命保険は、住宅ローンの契約者が死亡または高度な障害状態に陥った場合に保険金が支払われます。
しかし、働けなくなる原因は必ずしも高度な障害状態によるものではありません。
たとえば、けがや病気によって働けなくなり、収入が途絶えるというケースも考えられます。
このようなリスクをカバーしてくれる保険には、「住宅ローン疾病保障保険」や「住宅ローン返済支援保険」などがあります。
団体信用生命保険では対応できないリスクに備えるため、これらの保険にも加入することを検討してください。
このような保険に加入することで、けがや病気によって働けなくなった場合にも、ローン返済がサポートされることになります。
住宅ローン疾病保障保険の場合
住宅ローン疾病保障保険とは、団体信用生命保険では該当しない特定の病気になった場合に、ローン返済が不要になる保障を提供するものです。
この保険は、さまざまな金融機関で異なる種類があります。
例えば、「3大疾病保障」という一つの種類では、ガン・急性心筋梗塞・脳卒中になった場合、一定の要件を満たすことで保険金が支払われます。
また、「8大疾病保障」という別の種類では、先の3大疾病に加えて、高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎にも保障が適用されます。
このように疾病保障を付けることで、住宅ローンの金利はより高くなりますが、将来的に特定の病気になった場合でも安心してローンを返済することができます。
いざという時のために、疾病保障を加入しておくことは一つの有益な手段です。
住宅ローン返済支援保険の場合
死亡や重大な障害状態以外でも、働けなくなった場合に住宅ローンの支払いを補償してくれるのが住宅ローン返済支援保険です。
この保険では、けがや病気による長期の療養期間が30日を超えた場合、毎月の住宅ローンの返済を補償してくれます。
入院だけでなく、自宅での療養中も対象となります。
もし住宅ローン契約者が働けなくなった場合、住宅ローンの返済が困難になるリスクに備えるために、この保険を検討することも一つの方法です。
団体信用生命保険では保障できないリスクをカバーしてくれる保険
ただし、全ての理由による就業不能であっても、保険が支払われるわけではありません。
たとえば、保険契約者が故意に就業不能になった場合や、戦争や暴動による場合、または妊娠による場合などは、保険金が支払われません。
また、保険会社ごとに異なる規定や保険料があるので、契約する保険会社の規定や料金をしっかり確認してください。
上記の保険以外でも、がんと診断された場合には、住宅ローン残高の50%をカバーする「がん50%保障プラン」があります。
このプランは、金利の上乗せがないので、手数料無料で契約できる金融機関もあります。
一方、「がん100%保障プラン」では、住宅ローン残高の全額が支払われますが、金利が上乗せされるため保険料が高額になる可能性があります。
「何かあったときのリスクは心配だけど、保険料を軽減したい」という方は、がん50%保障プランを検討することもおすすめです。
がんのリスクに備えつつ、経済的な負担を軽くすることができます。
長期入院等で収入不足に陥った時の対応策
最後に、入院期間の長期化などにより収入が減少する場合に備えた対策について考えてみましょう。
もし入院期間が1週間程度であれば、有給休暇を活用することで収入の減少をカバーすることができます。
しかし、けがや病気によっては長期間の入院が必要な場合もあります。
また、重大なけがの場合には、復帰時期が見通せない場合もあります。
それにより収入も大幅に減少し、住宅ローンの返済などで家計に負担をかけることになります。
住宅ローン以外にも、生活費や教育費なども支払わなければならず、生活自体が困難になるでしょう。
団体信用生命保険やその特約以外にも、リスクをカバーする方法が存在します。
緊急の場合に備えて、いくつかの対策を予め知っておくことで、様々なリスクに対応することができます。
収入不足に陥った時の対応策
最後に収入不足に陥った時の対応策を見ていきましょう。
住宅ローンの借り入れ金融機関に「返済額の軽減」や「延滞」を申請する
住宅ローンの返済が困難になると、自分たちが住んでいる家を手放すことを余儀なくされることがあります。
具体的には、任意売却を行ったり、最終的には競売にかけられることがあります。
これを避けるために、まずは直ちに金融機関に相談しましょう。
現在の状況を詳しく報告することによって、金融機関の担当者はさまざまな提案をしてくれるでしょう。
もし返済が本当に厳しい場合、金融機関は「リスケ」を提案することがあります。
これは、住宅ローンの返済額を削減したり、融資期間を延長してくれたりする方法です。
新たな条件で再構築することによって、返済の負担を軽減できるかもしれません。
労災保険を活用する
もしもけがや病気によって長期入院したことで収入が減ってしまった場合、労災保険が役立つかどうかを確認してみましょう。
もしもけがや病気の原因が「勤務中」に起こった場合、労災保険から保険金が支払われます。
労災保険には、休業補償給付や療養保障給付などの種類がありますが、それぞれの金額は異なります。
最大で平均給与の80%が補償されることもあります。
ただし、労災保険の給付を受けるためには、勤務中の業務が原因であることや、労働基準監督署による認定を受ける必要があります。
また、セクハラやパワハラなどによる精神的な就業不能の場合は、けがとは違い、原因が明確ではないため、認定を受けるまでに時間がかかることがあります。
傷病手当金を活用する
個人事業主ではなく、企業で働いている方は、協会けんぽや組合健保に加入していれば、傷病手当金を受け取ることができます。
傷病手当金は、ケガや病気によって仕事をすることができない状態が4日以上続いた場合に支給され、休業4日目から最長で1年6カ月まで、毎月の給与のおおよそ3分の2を受け取ることができます。
さらに、傷病手当金は非課税ですので、所得税や住民税を支払う必要はありません。
社会保険や障害年金を活用する
社会保険をうまく活用することで、私たちは高額な医療費などを軽減することができます。
これによって、私たちは自宅の住宅ローンなどにお金を充てることができるのです。
また、条件を満たす必要がありますが、障害年金を受け取ることができれば、私たちは一定の収入を確保することもできます。
その結果、私たちは安心して生活を送ることができるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。住宅ローンは長期にわたって返済を行っていく性質上、けがや病気のリスクもあります。
その際、加入している団体信用生命保険を活用したり、借り入れている金融機関への返済額の見直し等を申請して最善の策をとることを心がけましょう。